2024年7月27日土曜日

スタチンと薬物相互作用

スタチンと薬物相互作用

ロスバスタチンと水酸化マグネシウムを併用すると、ロスバスタチンの血中濃度が50%低下し、2時間ずらすと血中濃度の低下が20%になる。

これはAUC(薬物血中濃度時間曲線下面積)の低下による。

制酸剤の投与を2時間ずらすことにより、このAUCの低下が回避される。

(吸収過程における薬物相互作用が原因)


この水酸化マグネシウムと、その他の汎用されているPPI等の胃薬に関しての報告はない。 


水酸化マグネシウムには相互作用がある。似た名前で酸化マグネシウムという便通改善薬がある。ロスバスタチンとの相互作用としては、ロスバスタチンの中にカルボキシル基があり、弱酸性薬物であることが知られている。そのため、胃のpHが上がることにより、イオン化が進み吸収されにくくなる。

また、このロスバスタチンのOH基に酸化マグネシウムが結合すると、キレート形成してロスバスタチンが吸収されにくくなることも知られている。

両者は名前が似ているが、水酸化マグネシウムと酸化マグネシウムは、相互作用の機序に違いがある。

ほかのスタチンでは、今のところ報告はない。


スタチンの中で、ロスバスタチンは唯一極性の高いメタンスルホンアミド碁を含むために水性であることが知られている。

このためにキレートしやすくなっている。

しかしほかの多くは脂溶性なので、その違いがあるのではないかと考えられる。


スタチンは様々な薬剤との相互作用や、併用禁忌や慎重投与の必要な薬がある。


特に気をつけたいものには、免疫抑制剤がある。

シクロスボリンは、併用禁忌。

多くのスタチンでは、AUCやCmaxが、両者も併用により大きく上昇する。

唯一、併用注意となっている薬にはフルバスタチン(商品名ローコール)がある。

最大60mgまで投与可能となっているが、AUCが3倍増加するので、それを考慮して最大用量の3分の1程度の10~20mg投与であれば、安全に使用できる。


一般的に、抗真菌薬、マクロライド系抗生物質、抗凝固薬のワーファリンなども、ほかの薬剤との相互作用で血中濃度変化が知られている。

ロスバスタチンは、抗凝固作用が増強するのでINRなどをみながら、注意して使用する必要がある。

マクロライド系抗生物質やアゾール系抗真菌剤なども、HMG-CoA還元阻害薬(スタチン)との併用で、ミオグロビン尿症や腎機能悪化による横紋筋融解症をきたすおそれがある。

フィブラート系薬剤両様に注意をしたい。


従来から、スタチンとフィブラートを併用すると横紋筋融解症の副作用発現串が高まると考えてきた。

日本動脈硬化学会で「スタチン不耐に関する診療指針 2018」が出されているが、家族性高コレステロール血症などの心血管疾患リスクの高い患者では、LDLコレステロールを厳格にコントロールする必要がある。

この場合には、スタチンは用量依存性に、CPK値上昇、腎機能悪化、筋肉痛などの症状出現の可能性があり、それらを注意しながら投与する。

しかし、症状が何もな、CPKも上昇しない場合は、積極的に増量しても問題ない。

また、筋肉痛などの症状は、ノセボ効果(逆偽薬効果)によりスタチンを内服していることで症状がある患者さんもいる。

この場合は、患者に薬の効果や副作用、必要性の説明をしっかりすることが重要となる。

CPKなら症状がなければ1,000mg/ dLまで、肝機能は2倍まで、ビリルビン値でしたら2mg/dLを超えるまでスタチンを投与してもメリットのほうが大きいことがわかっている。

実際に有害事象での、CK値の上昇や筋痛などは7.2%程度といわれている。


最近出たペマフィブラートは、スタチンとの相互作用がほとんどないといわれている。

このペマフィブラートは、ほぼ肝代謝の薬なので、腎機能が悪くても使えるという特徴がある。発売当初は、同じフィブラート系薬剤として、電子添文には同様な腎機能障害には禁忌との注意が出ていたが、途中で見直された。

現在は変更され、高度腎機能障害患者においても増悪はなかったと記載されている。

腎機能障害がある患者さんにペマフィブラートは比較的安全に使える。

当然、肝機能、CPK、腎機能には注意したい。


https://www.kyorin-medicalbridge.jp/doctorsalon/2024/06/7748.html

(要ログイン 「ドクターサロン68巻2024年6月号」一部改変)


2024年7月23日火曜日

健康な大人子供には深刻なウイルスではない」KP.3の症状と対策

 「健康な大人子供には深刻なウイルスではない」KP.3の症状と対策

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1304020

(解説;長崎大学高度感染症研究センター・森内浩幸センター長)  

*新型コロナウイルスの「KP.3株」とはどんなウイルス?

・新型コロナウイルスはどんどん変異を繰り返している。最初に武漢から出たものから「アルファ」、「デルタ」、「オミクロン」「になり、オミクロンの中でも『BA.1」、「BA.2」と変異してきた。


・いま流行している「KP.3」は「BA.2」の子孫の子孫がさらに変異したもの。オミクロン株という大きなグループの中での変異が続いている。


すでにゲノムの1%が変異した

・「武漢株」が生まれてから今の「KP.3株」に至るまでの変異を全部合わせるとゲノム構造の1%を超えている。人とチンパンジーのゲノムの違いが1%。”種の違い” がある程の変異が既に起きたことになる。


・当初のウイルスに対して免疫を持っている人でも、完全に逃れることはできない。これは新型コロナに限ったことではなく、インフルエンザでも他の風邪ウイルスでも同じ。一度かかれば終生免疫のできる「はしか」や「水疱瘡」のような病気とは違って、いわゆる風邪のウイルスは何度もかかる宿命にある。


「KP.3株」毒性や感染力は?

・生き残るウイルスは必ず他のウイルスに比べて感染が広がりやすくなっている。変異によって、既に私達が実際に関わったりワクチンによって身につけた免疫からすり抜ける力(免疫逃避)が強くなっている。「KP.3」がしばらくの間は中心となって流行が起こる可能性が高い。


・ウイルス自体の「病原性」「毒性」は従来株と極端な違いはない。デルタ株までは一気に肺炎が酷くなって命を落とすような病気だったが、オミクロン以降はインフルエンザと同じように、高齢者が感染することで寝たきりになり誤嚥性肺炎を起こすとか、元々持ってる基礎疾患が悪化することなどによって命に関わるケースが出ている。

・健康な大人や子供たちにとっては、それほど深刻なウイルスだということではない。一方で高齢者や基礎疾患を持っている人などリスクの高い人たちの感染には気をつける必要がある。病状はウイルスの特性より、その人がどういう免疫状態、体調にあるか、基礎疾患はどうであるかなどの組み合わせによって変わってくる。


*「KP.3」への感染は症状で分かるのか?

・「より高い熱が出る」とか「喉がより痛くなる」などの話もあるが「本当に他の株の流行の時と比べて明らかな違いがあるか?」というと、何となくそういう傾向があるかもしれないね、という程度。

コメント;

大学病院に、たくさんの高熱患者が受診するのでしょうか。

もしそうだとしても、週あたりの教授の外来診察回数は1回か2回程度。開業医はほぼ毎日、診療を行っています。


・インフルエンザや他の風邪と極端に違いがあると捉える必要はない。唯一コロナ感染でかなり特徴的だった「嗅覚や味覚の障害」はオミクロン以降は相当少なくなっている。まずそういったことは区別をつける上では役に立たない。


熱中症との区別はつきにくい?

・それはそうだと思う。熱が出るし体がぐたっとなるのは、熱中症でもコロナやインフルエンザのひどい時でも全く変わりはない。


・当初から分かっているように、このウイルスは3密の中で広がりやすい。日本の夏は過酷なので、当然屋内に入って窓を閉め切って冷房をつける。換気をする機会が減る。その中で人から人へのウイルスの伝播は起こりやすくなっている。「換気」も「熱中症対策」も大事なのでそのバランスが難しいところだ。


感染が疑われたらとるべき行動は?

・高齢者や基礎疾患を持っている方でなければ慌てる必要はない。診断を絶対につけないといけないということでもない。検査のために病院に殺到することで医療が逼迫する恐れが出てくるのは本末転倒だ。

コメント;

大学病院勤務の立場ならばこそ、言える言葉ですね。高熱患者がすべて新型コロナというわけではありません。新型コロナが流行し出した4年前、小児科開業医の一部に「発熱患者は当院では診療できません」と張り出しをしていたケースがありました。小児の患者の多くは発熱患者です。ちょっと笑ってしまいました。


・一方で新型コロナが厄介なのは、症状のない人からでも感染が拡大すること。仮に病院に行かないという選択肢を取るのであれば、少なくとも「症状が完全に良くなるまで」はおとなしく家で過ごす。少しでも症状があったらその間は職場であれ学校であれ休む。それだけでも感染の拡大はかなり抑えられる。とにかくリスクの高い人を守るということに専念すべき。

コメント;

「症状のない人」では文脈がおかしくなります。「症状が少ない人」の方が表現としてはいいのかもしれません。実際は無症状の人でも、濃厚接触者(5類になってからは使われなくなりました)などでは新型コロナ陽性となることはよくあります。発症2日前から感染力があるといわれており、ウイルス量も発症直前がピークという説もあります。これが、発症1~2日後にウイルス量がピークとなるインフルエンザとは違うところです。新型コロナが発症直後から陽性に出やすい理由でもあります。


妊娠中の人のリスクは高いのか?

・妊娠していない同じ年齢の女性に比べると、当然リスクは高くなると思う。ただ、ものすごく高いわけではないのですごく心配する必要はない。できるだけ感染しないように、感染が疑われた場合はちゃんと診断をつけることを心がけるといいと思う。


感染対策はこれまで通りでいいのか?

・流行当初のように学校でも職場でも店でもどこでも消毒液を置いて消毒しまくることはほとんど意味がない。そういう感染経路はゼロではないが非常に小さいということがわかっている。その代わり換気がすごく大事だということもわかっている。

コメント;

結局は、接触感染より飛沫感染が主体ということです。飛沫感染の場合には、当然鼻や口

から吸い込むことになります。接触感染の場合には、目をこすって目の結膜からウイルスが侵入したり、鼻をいじって鼻粘膜から侵入するケースが考えられます。


・基本的に、ほとんどの屋外イベントはあんまり心配することはない。屋外ビアガーデンで盛り上がるのは全く問題ない。でも、カラオケルームで明け方まで大声でみんなで歌って騒いで、というのは当然、感染リスクが上がる。コンサートも静かに聞くクラシックのコンサートなら最後の「ブラボー!」さえやめれば問題ない。でも、地下アイドルなんかのコンサートで盛り上がるなど、換気がそんなに良くはない中でみんなで大声出したらそれは当然、感染は広がる。そういった場所で過ごすときはマスクをちゃんとつけるなどが必要。

コメント;

「KP.3株」の感染力は強いといわれています。実際、患者さんは「どこで感染したか、まったくわからない」といったことをいわれます。「屋外ビアガーデンで盛り上がるのは全く問題ない」は言い過ぎです。「アルコールを含めた飲食と、ごく至近距離」ということで屋外であっても危険です。アルコールは声が大きくなり、当然飛沫量も多くなります。


ワクチンは打つべきなのか?

・ワクチンは当初は感染自体を防ぐ効果が非常に高かったので、「むしろ広げる可能性の高い若い人ほどしっかりと打って下さい」というワクチンだったが、今は感染を防ぐ効果はほとんど期待できない。今のワクチンは、あくまでも重症化のリスクのある人を守るためのワクチンに変わった。

コメント;

はたしてワクチンが変わったのでしょうか。考え方が変わったのでしょうか。これは大きな問題です。


・インフルエンザのワクチンと考え方はほとんど同じ。65歳以上であるとか基礎疾患を持っている場合に使いましょうと変わってきている。

コメント;

やはり「考え方」なんですね。


・そもそも健康な人にとっては重症化リスクは低いので、ワクチンを打つことにそこまで一生懸命になることはない。ただしコロナの後遺症と言われているものに対し、ワクチンを接種した人では明らかに少なくなるというデータが出ている。後遺症を防ぎたいという場合はワクチン接種は意義はあると思う。

コメント;

現在、問題となりつつあるのは、ワクチンの副反応そして後遺症です。集団免疫とはいまだ言えないものの、多くの人が新型コロナに罹患済みのため、新型コロナの後遺症なのか、ワクチンの副反応ないしは後遺症なのか、はっきりしなくなっています。そもそも、ワクチンの効果(予防および合併症の回避、死亡率の減少)がいまひとつはっきりしません。ご本人は立場上、ワクチンの存在を否定できないのでしょう。しかし、今回のワクチンは今までと違ってmRNAワクチンです。

mRNAワクチンについてのデータもそろいつつあります。安全性だけに関しても、肯定的な論文はあまりないようです。


今後の感染の波は?

・少なくともこの夏の間、感染がどんどん広がっていくこと自体は間違いないと思う。それが最終的にどの規模になるのかは分からない。コロナと共存する時代にはなったがコロナが終わったわけではないということだ。

2024年7月22日月曜日

前頭側頭型認知症

「前頭側頭型認知症」

https://www.nhk.jp/p/kyonokenko/ts/83KL2X1J32/episode/te/NGPN7YGLL2/

「きょうの健康」2016.4.20


前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮していくことで起こる。

店頭の物を勝手に持って行く、毎日同じ料理を食べるなど特徴的な症状が多い。

50~60代で発症しやすく、65歳未満で起こる若年性認知症の主な原因の1つとなっている。

アルツハイマー病と違って薬は補助的な効果にとどまるが、家族など周囲の人の接し方によって行動をうまくコントロールすることが可能。


*早期発見に役立つ症状チェック(初期に特徴的な症状が現れる)

①「利き手」「長所」など知っているはずの言葉を聞いても意味がわからない

②知人や友人の顔を見ても誰かわからない

③店頭や人の家の庭先にあるものを勝手に持っていく

④一時停止違反や信号無視など交通違反を繰り返す

⑤毎日のように急に出かける

⑥甘いものが過剰に好きになる、毎日同じ料理を食べる、食べ物をあればあるだけ食べる


①②が側頭葉から萎縮する「側頭型」の症状で、③④⑤が前頭葉から萎縮する「前頭型」の症状、⑥はどちらが萎縮しても起こる症状。


この6つの項目のうち、1つでも当てはまれば、前頭側頭型認知症が疑われる。


前頭側頭型認知症の症状の特徴

・言葉がわからない  - 左側頭葉の萎縮による症状 -

・人物がわからない  - 右側頭葉の萎縮による症状 -

・気ままに見える行動 - 前頭葉の萎縮による症状 -

・同じ行動を繰り返す - 前頭型、側頭型に共通する症状 -




前頭側頭型認知症

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/zentou-sokutou.html

(公益財団法人「長寿科学振興財団」が運営しているウェブサイト)

脳の中で、前頭葉は「人格・社会性・言語」を、側頭葉は「記憶・聴覚・言語」を主につかさどっています。


そのため、前頭側頭葉型認知症を発症すると、これらが正常に機能しなくなることにより、下記のような特徴的な症状が表れます。

・社会性の欠如

・抑制が効かなくなる

・同じことを繰り返す

・感情の鈍麻

・自発性な言葉の低下

2024年7月21日日曜日

胸痛症候群

 胸痛症候群

https://www.jhf.or.jp/action/2ndopinion/faq/post_1/

胸痛症候群とは「原因不明の胸痛をいう。胸痛の原因になる疾患のすべてが否定された状態を仮に一括していっておく場合に用いられる」と定義されている。   

実は仮に診断しておく原因不明の胸痛ということになる。


原因がわかれば、ここから除外される。

ちなみに、ある総合内科クリニックの統計(内科2018;122:485-488)では、初診時、胸痛を主訴としていた方の最終診断は狭心症8%、その他の心疾患5%、 肺・気管支疾患20%、消化器疾患10%であり、筋・骨格疾患20%、肋間神経痛 8%、心因性など17%、その他・不明11%であった。

つまり、筋・骨格疾患、心因性、その他の計52%が胸痛症候群だった。


胸痛症候群の痛みは、チクチク、ピリピリ、刺すような痛みが多い。

14歳から20歳までの若い女性にしばしば訴えられる。

指で指し示すことができる範囲の痛みであることが多く、ピンポイントの痛みといわれたりする。

痛みは身体を伸ばしたり、体位を変えたりすると消失したり、逆に出現したりと体位と関係することが多い。

(コメント; 実は、心膜や胸膜由来の痛みも呼吸や体位で変化することがある)


成長期、思春期のこの年代によくみられて、日が経つと自然に軽快していく、というのが特徴であり、多くの場合は筋・骨格系の成長とかかわる胸痛だろうと考えられている。

胸の筋肉の一部を摘まむと痛むことがあるのも筋肉痛とみる根拠となっている。

同じような症状でありながら、後日に診断が明確になる特殊な場合がある。

痛む箇所に発赤がみられ、やがて水泡ができて、ヘルペスであったとわかる場合、肋骨の下縁に沿った痛みであることから肋間神経痛と診断される場合が該当する。

肋骨の肋軟骨との接合部が局所的に腫脹していて、おさえると痛むのはテイーチェ症候群とよばれる肋軟骨関節炎だ。

このような局所の炎症は、みぞおちの剣状突起、鎖骨と胸骨をつなぐ胸鎖関節にもみられることがある。

また、注意を要するものに気がつかないでいた肋骨骨折という場合がある。

海外でも注目されていて、Precordial Catch Syndrome、プレコーディアル・キャッチ症候群、とよばれるものがある。

これらの文献では、患者さん本人あるいはそのご両親に悩み事がある場合があるとされ、痛みの部位は、心臓ではなく胸の筋肉部分(胸壁)であることをよく理解させた上で、屋内外の運動をすると痛みが消失するケースがある。

 

若い人の胸痛は、狭心症など命にかかわるような心臓病が原因で起こることはほとんどなく、病院の検査で異常がなければ、こうした胸の外側の痛みである場合が多く、過度な心配は不要だ。


関連サイト

あなたの症状と胸壁症候群の関連をAIでチェックする

https://ubie.app/lp/search/chest-wall-syndrome-d1204


Tietze症候群:リウマチ性疾患と鑑別が必要な骨格症

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/32/4/32_260/_pdf/-char/ja


筋骨格系の胸痛 MCWP (Musculoskeletal chest wall pain)

http://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-nagasakiiryo-180904.pdf

(ドクター用)

2024年7月9日火曜日

「マイナ保険証」導入強行で医療機関が廃業ラッシュ

 「マイナ保険証」導入強行で医療機関が廃業ラッシュ 読み取り装置・請求システムの導入費用が大きな負担、「制度についていけないので閉院を考えている」

https://news.yahoo.co.jp/articles/381b41cf00394299313f1efc71738ba273010718

政府は今年12月に紙の保険証を廃止して、「マイナ保険証」への一本化を強行する構えだ。マイナンバーカードを持たない人を中心に不安が広がっているが、カードを取得しているか否かにかかわらず、多くの人に深刻な影響が及びそうだ。マイナ保険証導入により、町の小さな医院や歯科クリニックが廃業に追い込まれている。


この3月から4月にかけて東京だけで病院・診療所211機関、歯科医院84機関が廃業した。医療機関の廃業・解散が過去最多だった昨年でも全国で709機関(医科・歯科合計)という数字だ。たった2か月間で、東京だけでも300近い医療機関が廃業した今年が、いかに異常な“廃業ラッシュ”であるかがわかる。


全国保険医団体連合会は昨年10月、記者会見を開いて「オンライン請求義務化反対」を訴えた。

 その際にまとめた資料によると、全国の医科診療所のうち診療報酬をCD-ROMや紙レセプトで請求していたのが1万5700機関、歯科医院では4万680機関にのぼる。同連合会のアンケート調査でそのうち19%が、「義務化されると廃業せざるを得ない」と回答しており、最大で「医科」の診療所が全国で2983機関、「歯科」の医院が7729機関、合計1万712機関が廃業する可能性があると試算している。


同連合会や開業医らの反対にもかかわらず、政府が方針通り今年4月からオンライン請求を義務化した途端、かつてない規模の廃業ラッシュが起き、「医療機関1万件廃業」が現実味を帯びてきた。


患者にとってマイナ保険証もレセプトのオンライン請求義務化もメリットは全くない。医療機関も負担が増えるだけ。その結果、医療機関の廃業が増えて地域によっては医療が受けられない事態になりつつある。地方で医療機関がなくなれば安心して子供を産めない、育てられない。高齢者も安心して暮らせない。そんな医療限界集落、歯科医療限界集落が全国に増えています。

(週刊ポスト2024年7月19・26日号)


コメント;

これでいいんですか。

そこまでして「マイナ保険証」をゴリ押しする理由はなんですか。

日本医師会も黙認同然。

しかも、災害時、停電時、カードリーダー故障、サイバー攻撃で医療が瞬時にとまる医療。

危機管理意識ゼロです。



2024年7月2日火曜日

(ドクター用)アルドステロンブレイクスルー

アルドステロンブレイクスルー

・ACE阻害薬/ARBを開始してしばらくは、アルドステロンの血中濃度は低下する。しかし、投与開始から半年ほど経過すると、アルドステロンの血中濃度が、投与前と同じかそれ以上に再上昇してしまうことがわかっている。この現象を、アルドステロンブレイクスルーという。その機序の詳細は分かっていない。


・頻度は40-50%程度とされ、少なくない。この現象は薬剤服用後6‐12カ月後とされる。しかし、アルドステロンブレイクスルーが起きても血圧や電解質に変化は多くはない。問題になるのは、ACE阻害薬/ARBがもたらす、心血管や腎の臓器保護作用を損なわさせる可能性があること。

・対策としては、(少量の)抗アルドステロン剤(MRA)を追加する、またはARBはオルメテックやアジルバなどを選択する。 


アルドステロンブレークスルー

血圧を調節するホルモンであるレニン-アンギオテンシン-アルドステロンの分泌量が増すと血圧が上がることが知られている。

降圧薬の一部には、このホルモンの働きを抑えて、血圧を下げるものがある。

このうちのアンギオテンシンというホルモンが血圧上昇の最も重要な鍵を握っている。

アンギオテンシンには I と II があり、II はアンギオテンシン変換酵素により I から作られる。

アンギオテンシン II は血圧調節の中心的な働きをしているため、多くの降圧薬はアンギオテンシン II を標的として開発されてきた。

その降圧薬の一つにアンギオテンシン II 受容体 AT1 拮抗薬があります。

この受容体をブロックすると、アンギオテンシン II の作用が減弱するが、この状態が長期間持続するとアンギオテンシン II がアンギオテンシンに変換されなくなるので、アンギオテンシン II の濃度が上昇した状態が続く。

その結果、アンギオテンシン II がアンギオテンシン II 受容体AT2を刺激し、アルドステロンが過剰になる。

いわゆる、アルドステロンブレークスルーと呼ばれており、血圧が上昇するなどの心血管障害を進展させる有害事象が起こる。この事象が生じる頻度は6か月服用で約10%、1年で約53%と言われています。

しかし、アンギオテンシン II 受容体 AT1 拮抗薬のうち、オルメサルタンとアジルサルタンはアンギオテンシンIIをアンギオテンシンに変換するアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)を活性化することで知られており、ACE2がアンギオテンシンIIをアンギオテンシンに変換することで、アンギオテンシンIIの濃度が低下し、アルドステロンブレークスルーが起きにくくなる。

もし、ACE阻害薬/ARBを服用していて最近、血圧の下がりが悪くなったと感じたら、この現象を考慮する必要がある。


アルドステロンブレイクスルーは,Pitt,Struthersらによって提唱された当初エスケープという表現がされ1、最近までそのように使用されてきた。

しかし,そもそもアルドステロンエスケープとは歴史的に別の意味で用いられてきており (アルドステロンを投与した際,最初はナトリウム貯留のため体重が増加するが,長期的には逆に尿中ナトリウム排泄量が増加して体重が正常化すること)、混乱を避けることから最近ではブレイクスルーで統一される傾向にある。


アルドステロンブレイクスルーとは

https://note.com/doctorpooh/n/n2d0cd33cc393


アルドステロン・ブレイクスルー

https://x.com/yo_ku_iyaku/status/1807389692788359289


オルメテックはアルドステロン・ブレイクスルーを起こしにくい

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/yamamoto/201406/536696.html

(要ログイン)


RA系抑制薬による長期治療が必要な場合、アンジオテンシンII標的療法とアルドステロン標的療法の早期併用が有効か

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2012/201209/526843.html

(要ログイン)

アルドステロン不変は「専門家も予想外の結果」【ROAD-EURASIA】

https://www.m3.com/clinical/news/713529


本態性高血圧症とアルドステロン

https://www.lifescience.co.jp/cr/zadankai/0608/4.html