スタチンと薬物相互作用
スタチンと薬物相互作用
ロスバスタチンと水酸化マグネシウムを併用すると、ロスバスタチンの血中濃度が50%低下し、2時間ずらすと血中濃度の低下が20%になる。
これはAUC(薬物血中濃度時間曲線下面積)の低下による。
制酸剤の投与を2時間ずらすことにより、このAUCの低下が回避される。
(吸収過程における薬物相互作用が原因)
この水酸化マグネシウムと、その他の汎用されているPPI等の胃薬に関しての報告はない。
水酸化マグネシウムには相互作用がある。似た名前で酸化マグネシウムという便通改善薬がある。ロスバスタチンとの相互作用としては、ロスバスタチンの中にカルボキシル基があり、弱酸性薬物であることが知られている。そのため、胃のpHが上がることにより、イオン化が進み吸収されにくくなる。
また、このロスバスタチンのOH基に酸化マグネシウムが結合すると、キレート形成してロスバスタチンが吸収されにくくなることも知られている。
両者は名前が似ているが、水酸化マグネシウムと酸化マグネシウムは、相互作用の機序に違いがある。
ほかのスタチンでは、今のところ報告はない。
スタチンの中で、ロスバスタチンは唯一極性の高いメタンスルホンアミド碁を含むために水性であることが知られている。
このためにキレートしやすくなっている。
しかしほかの多くは脂溶性なので、その違いがあるのではないかと考えられる。
スタチンは様々な薬剤との相互作用や、併用禁忌や慎重投与の必要な薬がある。
特に気をつけたいものには、免疫抑制剤がある。
シクロスボリンは、併用禁忌。
多くのスタチンでは、AUCやCmaxが、両者も併用により大きく上昇する。
唯一、併用注意となっている薬にはフルバスタチン(商品名ローコール)がある。
最大60mgまで投与可能となっているが、AUCが3倍増加するので、それを考慮して最大用量の3分の1程度の10~20mg投与であれば、安全に使用できる。
一般的に、抗真菌薬、マクロライド系抗生物質、抗凝固薬のワーファリンなども、ほかの薬剤との相互作用で血中濃度変化が知られている。
ロスバスタチンは、抗凝固作用が増強するのでINRなどをみながら、注意して使用する必要がある。
マクロライド系抗生物質やアゾール系抗真菌剤なども、HMG-CoA還元阻害薬(スタチン)との併用で、ミオグロビン尿症や腎機能悪化による横紋筋融解症をきたすおそれがある。
フィブラート系薬剤両様に注意をしたい。
従来から、スタチンとフィブラートを併用すると横紋筋融解症の副作用発現串が高まると考えてきた。
日本動脈硬化学会で「スタチン不耐に関する診療指針 2018」が出されているが、家族性高コレステロール血症などの心血管疾患リスクの高い患者では、LDLコレステロールを厳格にコントロールする必要がある。
この場合には、スタチンは用量依存性に、CPK値上昇、腎機能悪化、筋肉痛などの症状出現の可能性があり、それらを注意しながら投与する。
しかし、症状が何もな、CPKも上昇しない場合は、積極的に増量しても問題ない。
また、筋肉痛などの症状は、ノセボ効果(逆偽薬効果)によりスタチンを内服していることで症状がある患者さんもいる。
この場合は、患者に薬の効果や副作用、必要性の説明をしっかりすることが重要となる。
CPKなら症状がなければ1,000mg/ dLまで、肝機能は2倍まで、ビリルビン値でしたら2mg/dLを超えるまでスタチンを投与してもメリットのほうが大きいことがわかっている。
実際に有害事象での、CK値の上昇や筋痛などは7.2%程度といわれている。
最近出たペマフィブラートは、スタチンとの相互作用がほとんどないといわれている。
このペマフィブラートは、ほぼ肝代謝の薬なので、腎機能が悪くても使えるという特徴がある。発売当初は、同じフィブラート系薬剤として、電子添文には同様な腎機能障害には禁忌との注意が出ていたが、途中で見直された。
現在は変更され、高度腎機能障害患者においても増悪はなかったと記載されている。
腎機能障害がある患者さんにペマフィブラートは比較的安全に使える。
当然、肝機能、CPK、腎機能には注意したい。
https://www.kyorin-medicalbridge.jp/doctorsalon/2024/06/7748.html
(要ログイン 「ドクターサロン68巻2024年6月号」一部改変)
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