米国糖尿病学会「糖尿病の標準治療2025」発表
米国糖尿病学会「糖尿病の標準治療2025」発表
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/202412/586843.html
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米国糖尿病学会(ADA)は2024年12月9日、「糖尿病の標準治療2025」(Standards of Care in Diabetes―2025)を発表した。
第9章「薬物治療」(Pharmacologic Approaches to Glycemic Treatment)では、「成人2型糖尿病の薬物治療」の節で、推奨の多くが改変された。その中で新設された推奨は、以下の項目だ。
・症候性の左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を伴った、肥満2型糖尿病に対するグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬の投与
・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)や代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を伴った肥満2型糖尿病に対する、GLP-1受容体作動薬、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/GLP-1受容体作動薬、ピオグリタゾンの単独投与、ないしピオグリタゾンとGLP-1受容体作動薬の併用投与
・DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬ないしGIP/GLP-1受容体作動薬の併用は行わない
最後に挙げた併用の非推奨は、併用してもGLP-1受容体作動薬の単独投与より血糖降下作用は増強しないことを根拠としている。
また第9章では、「全ての糖尿病の人に対する追加の推奨」(Additional Recommendations for All Individuals With Diabetes)と「特別な状況と集団」(Special Circumstances and Populations)が、新たな節として追加された。
「全ての糖尿病の人に対する追加の推奨」の節では、以下の項目が推奨された。
・基礎インスリン投与量の過剰が疑われた場合の対応
・強化インスリン療法を行う場合のグルカゴン処方
・糖尿病治療の妨げとなる可能性がある経済的障害の評価
・経済的障害がある患者における安価な薬剤の考慮
特別な状況と集団」の節では、以下の項目が推奨された。
・FDAが承認していない配合薬の使用の非推奨
・供給不足などにより薬剤が入手できない場合の対応
・挙児希望者に対する妊娠前の糖尿病管理に関する計画立案
・糖尿病性ケトアシドーシス発症のリスクがある糖尿病患者への指導
高血圧の診断基準・治療目標は130/80で変わらず
「心血管疾患とリスク管理」(Cardiovascular Disease and Risk Management)では、まず血圧管理に関して、血圧を測定する間隔が、「毎回の受診」以外に「少なくとも6カ月間隔」との条件が加えられた。
糖尿病合併高血圧の診断基準は2024年版と変わらず、収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧80mmHg以上だ。
降圧目標値も、130/80mmHg未満で変更はない。
高血圧に対する薬物治療の中では、妊娠の可能性がある人などに対して、ACE阻害薬、ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、直接レニン阻害薬、ネプリライシン阻害薬の投与を避けるべきとの推奨が新設された。
脂質異常症に関しては、妊娠中または妊娠の可能性がある人に対する薬物治療についての推奨が、2024年版よりも詳細な記載となった。
また、高トリグリセリド血症として何らかの対応を考慮すべき基準値が、2024年版では絶食時・非絶食時にかかわらず175mg/dL以上だったが、2025年版では絶食時150mg/dL以上、非絶食時175mg/dL以上に分けられた。
加えて、スタチン投与患者にエイコサペンタエン酸(EPA)の追加を考慮するトリグリセリド値の下限が、135mg/dLから150mg/dLに引き上げられた。
動脈硬化性心血管疾患については、細小血管障害などがある糖尿病患者に対して、末梢動脈疾患(PAD)のスクリーニングを推奨する年齢が50歳以上から65歳以上に引き上げられたほか、同様にPADのスクリーニングを考慮する条件が、糖尿病の罹病期間10年以上かつ心血管疾患高リスクと厳格化された。
症候性HFpEFを合併した肥満2型糖尿病に対するGLP-1受容体作動薬の投与が、新設された。
これ以外にADAでは、注目すべき改訂点として、
(1)インスリン療法を行っていない成人の2型糖尿病患者に対する持続血糖モニター(CGM)導入、
(2)体重目標達成後の減量に関する薬物治療の継続、
(3)1型糖尿病ないし糖尿病性ケトアシドーシスのリスクがある糖尿病患者における大麻の使用、
(4)植物由来の蛋白質や食物繊維も含めた、エビデンスに基づいた食事パターンを推奨するための幅広い栄養指針
──などを挙げている。
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