2024年8月25日日曜日

高齢者への低用量アスピリン、中止すると…?

高齢者への低用量アスピリン、中止すると…?https://www.carenet.com/news/general/carenet/59104?utm_source=m29&utm_medium=email&utm_campaign=2024081906

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心血管疾患(CVD)を有さない高齢者において、低用量アスピリンはCVDリスクを低下させず、全死亡や大出血のリスクを上昇させたことが報告されているが、すでに多くの高齢者に低用量アスピリンが投与されている。

そこで、オーストラリアの研究グループは、アスピリン中止の安全性を明らかにすることを目的として、CVDを有さない高齢者において、低用量アスピリン中止がCVDリスクに与える影響を検討した。

その結果、低用量アスピリン中止はCVDリスクを上昇させず、大出血リスクを低下させることが示された。

(BMC Medicine誌 2024.7.29)


本研究は、CVDを有さない70歳以上(一部65歳以上を含む)の高齢者を対象として低用量アスピリンの有用性を検討した「ASPREE試験」の参加者のデータについて、target trial emulationの手法を用いて後ろ向きに解析した。ASPREE試験でアスピリンが投与された参加者について、アスピリンを中止した群(中止群:5,427例)、継続した群(継続群:676例)に分類して比較した。

主要評価項目はCVD、主要心血管イベント(MACE)、全死亡、大出血とし、Cox比例ハザードモデルを用いて、3、6、12、48ヵ月のフォローアップ期間におけるハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。

HRおよび95%CIの推定の際には、傾向スコアによる調整を行った。


本研究において、中止群では、短期(3ヵ月後)および長期(48ヵ月後)におけるCVD、MACE、全死亡のリスクの有意な上昇はみられなかった。

一方、12ヵ月後の全死亡および3、12、48ヵ月後の大出血のリスクは有意に低下した。

傾向スコアによる調整後の中止群の継続群に対するHR、95%CI、p値は以下のとおり。


本研究結果について著者らは、3~12ヵ月後におけるイベント数が少なかったことや、継続群は研究開始時点のCVDリスクが高かった可能性があることなどの限界を指摘しつつも「高齢者において、低用量アスピリンを中止してもCVDや全死亡のリスクの上昇はみられなかった。また、低用量アスピリンの中止によって、大出血リスクが低下するため、とくにCVDを有さない70歳以上の高齢者において、アスピリンの処方中止が安全である可能性があると考えられる」とまとめた。

2024年8月19日月曜日

血中BNPとNT-proBNP

血中BNPとNT-proBNP

https://www.asas.or.jp/jhfs/topics/bnp201300403.html?_fsi=iJwAe06A

BNPとNT-proBNPについて

BNPとNT-proBNP生成は同じBNP遺伝子に由来する。

BNP遺伝子からは、転写・翻訳後、BNP前駆体(proBNP[1-108])が生成され、その後、生理的に非活性のNT-proBNP(proBNPのN端から76個のアミノ酸[1-76])と生理活性を有する成熟型BNP(残りの32個のアミノ酸[77-108])に切断される。

つまり、BNPとNT-proBNPは心筋から等モルで分泌されている。


BNPやNT-proBNPは、主として心室にて、壁応力(伸展ストレス)に応じて遺伝子発現が亢進し、速やかに生成・分泌される。

従って、壁応力が増大する心不全では、その重症度に応じて血中濃度が増加する。

両ペプチドとも心室のみならず心房からも10%ほど分泌される。

そのため、心房細動などでも軽度上昇する。

心筋へのストレス以外にも、両ペプチドの血中濃度に影響を与える因子がある。

例えば、BNP、NT-proBNPともに腎機能の低下に合わせて血中濃度が上昇する。

特にNT-proBNPはその代謝の殆どが腎臓からの濾過による排泄に依存しているために軽度の腎機能低下でも影響を受け、eGFR30ml/min/1.73m2未満の症例では増加の程度が大きくなる。

また、高齢者でも一般に両ペプチドとも血中濃度が上昇する。

さらに、急性炎症でも高い値を示すことがある。

逆に、肥満者では非肥満者より両ペプチドとも低値を示す。

従って、今回のステートメントに使用されている数値の解釈をする場合にはこれらの因子に配慮することも必要だ。

両ペプチドの測定にあたっては、BNPは血漿を用い、NT-proBNPは血清または血漿を用いる。

(版権 「日本心不全学会」一部改変)



参考

<BNPとNT-proBNPの違いについて>

NT-proBNPは「血清」で検査が可能であり、また、採血後の検体の安定性に優れ、生化学検査と同一の採血管で依頼が可能などの運用面での有用性がある。

また、BNPと異なりNT-proBNPは代謝経路が腎臓のみであることから、糸球体濾過値の低下と共にBNP以上に上昇することから、心機能のみならず腎機能も併せて評価する心腎関連マーカーとして注目されている。

コメント;

両方の影響を受けるということは、心機能と腎機能を峻別して評価できないということでもあります。

どう考えてもBNPに分がありそうです。

2024年8月18日日曜日

レストレスレッグス症候群

レストレスレッグス症候群

レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)は、夕方から夜間にかけて脚を動かさずにはいられない強い衝動が生じ、安静不動時に悪化し、運動動作にて改善がみられる特徴的な異常感覚が出現し、これが原因で不眠を来す睡眠関連運動障害である。本症では周期性四(下)肢運動(PLM)を高率に併存する。


RLSは、むずむず脚症候群(日本睡眠学会)、下肢静止不能症候群(日本神経学会)、Willis-Ekbom病とも呼称される。

RLS の誘因には、妊娠、鉄欠乏、末期腎不全(透析)などがあり、RLS 症状を誘発・増悪させる薬物には、抗ヒスタミン薬、ドパミン受容体拮抗薬、抗うつ薬などがある。


引用・一部改変

日医雑誌 第153巻・第5号 2024.8

版権 日本医師会