今後も減りゆく胃がん
今後も減りゆく胃がん
日本人男性の発がん原因のトップは喫煙で、約24%を占める。次いで2位が感染(18%)、3位が飲酒(8%)。男性に比べて生活習慣が良い女性の場合、喫煙や飲酒は4%前後にすぎず、1位は感染が15%を占める。
男女合わせると、日本人の発がん要因のトップは感染で、17%を占める。喫煙が2位(15%)、飲酒が3位(6%)。これまで日本人の発がん原因の断トツ1位はたばこだったが、喫煙率の低下で2位と逆転した。
欧米では感染は発がん原因の約5%にとどまる。日本はがんからみた社会のあり方において、まだまだ途上国レベルにあるといえる。
がん関連の感染症は、胃がんの原因のほとんどを占めるピロリ菌と、肝臓がんの原因の7割を占める肝炎ウイルス、子宮頸がんの原因のほぼ10%のヒトパピローマウイルス(HPV)の3つが最も重要だ。
なかでも胃がんは患者数が3位、死亡数は4位とメジャーながんだ。胃がんは年々減り続けているが、かつては日本のがんの圧倒的トップだった。1960年当時、男性のがん死亡の約半数、女性の4割が胃がんによるものだった。
日本のがんの代表だった胃がんが減っている理由はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染率の低下だ。
ピロリ菌の感染は7歳以降はほとんど起きない。ヒトの免疫系が「ほぼ完成する」のが7歳頃だからだ。
逆に、子どもの頃に感染したピロリ菌は、除菌をしない限りそのまま胃に一生住み続ける。
免疫系が完成する前の幼い頃に摂取した水や食物の衛生状態が、ピロリ菌の感染率を大きく左右する。江戸時代の感染率は100%近くだった。
現在80歳以上の世代で6~7割、65歳の年代では5割程度だ。
他方、50歳のピロリ菌感染率は3割、40歳は2割、30歳は1割と下がり、20歳以降では5%以下だ。胃がんは今後、さらに激減することになる。
日経新聞・夕刊 2025.7.9 東京大学 中川恵一 特任教授
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