2024年6月29日土曜日

伝染性単核球症を疑ったら鑑別に挙げるべき疾患

 伝染性単核球症を疑ったら鑑別に挙げるべき早期診断が欠かせないあの疾患

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/moyamoya/202406/584721.html

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Bウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)による、若年層でよく見られる感染症とのイメージがありますが、実はEBV以外にも同様の症状を引き起こすウイルスが存在する。


EBVが体内に入り、標的細胞であるBリンパ球に感染すると、感染したBリンパ球を排除するためにTリンパ球が活性化され増加する。

活性化したTリンパ球は通常より大きく、核が特徴的な形をしており、「異型リンパ球」と呼ばれる。

異型リンパ球は、ウイルスに感染したBリンパ球を攻撃し、病気の拡散を防ぐ重要な役割を担う。

これらの免疫システムの活動は肝臓と脾臓に負荷を掛けることから、肝脾腫が引き起こされる。

このように、伝染性単核球症の症状は、体がウイルスと戦おうとする免疫システムの反応によるもので、異型リンパ球の増加や肝脾腫は、体がウイルスに対抗している証拠といえる。


伝染性単核球症の約90%はEBVによるものとされているが、EBV以外にもサイトメガロウイルス(CMV)やヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのように似た症状を引き起こすウイルスが存在する。

CMV やHIVによる伝染性単核球症様の症状は全体的に軽度だ。

CMVの場合は、咽頭痛を伴わず、異型リンパ球の数が少なく、リンパ節腫脹が軽度であるのが一般的だ。

EBVとCMVの感染に対する特別な治療法はなく、主に解熱薬を投与した上での経過観察が行われる。


一方、HIV感染症は早期診断が予後の改善に最も有効なアプローチであり、診断の価値は非常に高いといえる。

さらに、HIVに感染した人は生涯で2~5人にHIVを広めるとされており、初期段階での診断は感染の拡大を防ぐ意味でも重要となる。

また、治療薬は比較的高価で、最新の薬剤は1日当たり約7000円、40年間で1億円以上の治療費がかかることになる。

急性HIV感染症を早期に診断できれば、前述の通り感染者(2~5人)を増やさずに済むので、経済的に見ても単純計算で2~5億円の医療費削減に貢献する可能性がある。


両疾患で共通する症状には、全身倦怠感、発熱、咽頭炎、頭痛など、急性上気道炎でもよく見られるものが含まれる。

これらを認めるケースでは、伝染性単核球症や急性HIV感染症も鑑別診断に挙げることになります。


相違点として、伝染性単核球症ではほぼ全例でリンパ節腫脹を伴うが、急性HIV感染症では頻度は約40%と少ない。

また、急性HIV感染症では約半数で皮疹を呈するのに対し、伝染性単核球症ではほとんど見られないのも特徴の1つ。

したがって、急性HIV感染症の可能性を考えたら、皮膚症状に注意を払う必要がある。


まとめ

*伝染性単核球症を疑う場合は、HIV感染症の可能性も考慮しよう。

*急性HIV感染症の早期診断は、患者本人の予後を著しく改善するだけでなく、感染拡大防止にもつながるため、診断価値が非常に高い。


伝染性単核球症とHIV

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(症状別頻度の図)

2024年6月24日月曜日

モビコール配合内用剤LD~HD

モビコール配合内用剤LD~HD

http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se23/se2359110.html

・腸管内の水分を増やし、便をやわらかくして排便を促します。また、腸管内の水分増加により、便の通りが滑らかになり、排便が楽になります。機能性の慢性便秘症に広く用いられるほか、別の病気からくる症候性便秘や薬剤性便秘にも使えます。

・主成分のマクロゴール(ポリエチレングリコール)の浸透圧効果により、腸管内の水分量が増加します。それに伴い、便の水分含有量が増え柔軟化、便容積が増大することにより、生理的に大腸の蠕動運動が活発化します。また、腸管内の水分増加により、排便がより滑らかになると考えられます。なお、マクロゴールのほかに、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび塩化カリウムが配合されるのは、腸内の電解質バランスを維持し、便中の浸透圧を適正なレベルに保持するためです。

・作用機序から、浸透圧性下剤(増量性下剤)に分類される慢性便秘症治療薬になります。

・海外での使用実績が豊富です。安全性が高く、小児を含めた慢性便秘症に対する有望な治療選択枝となります。刺激性下剤で問題視される耐性や習慣性の心配がなく、効き目が落ちることもありません。

・腫瘍やヘルニアなどで腸閉塞のある人は使用できません。

・決められた飲み方を守ってください。年齢や症状により用法・用量が違います。通常、少量で開始し、症状に応じて2日以上間隔をあけて増量します。

・飲む時間は決まっていません。排便のタイミングや生活リズムを考慮し、1日1~3回、朝、昼または夕食前後などにします。学校や職場で昼間の服薬が難しければ、1日2回朝夕に服用します。

・1包あたりコップ3/1程度(約60mL)の水に溶かして飲みます。溶解液の作り置きは勧められませんが、やむを得ない場合は、冷蔵庫に保存のうえ、できるだけ早く服用してください。飲み忘れたら、気づいたときに飲んでください。ただし、次の服用時間が近ければ、1回分抜かし、次の時間に1回分飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。

・比較的安全に長期服用が可能です。ただし、腹痛や下痢を起こすことがあるので、症状に応じ減量、休薬または中止を考慮する必要があります。治療方針もなく、ただ漫然と続けるのは好ましくありません。

・危険性が高いわけではありませんが、妊娠中における安全性はまだ確立されていません。このため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に限り使用されることになります。

・乳汁中の服用は、母乳栄養の有益性を考慮のうえ、授乳継続が可能かどうか医師が決めます。

・本剤は、水で溶解して経口服用します。

2歳以上7歳未満の幼児は初回用量としてモビコール配合内用剤LD(以後LD)1包を1日1回経口服用する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口服用、最大服用量は1日量としてLD 4包又はモビコール配合内用剤HD(以後HD)2包まで(1回量としてLD 2包又はHD 1包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量としてLD 1包までとする。


7歳以上12歳未満の小児は初回用量としてLD 2包又はHD 1包を1日1回経口服用する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口服用、最大服用量は1日量としてLD 4包又はHD 2包まで(1回量としてLD 2包又はHD 1包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量としてLD 1包までとする。


成人及び12歳以上の小児は初回用量としてLD 2包又はHD 1包を1日1回経口服用する。以降、症状に応じて適宜増減し、1日1~3回経口服用、最大服用量は1日量としてLD 6包又はHD 3包まで(1回量としてLD 4包又はHD 2包まで)とする。ただし、増量は2日以上の間隔をあけて行い、増量幅は1日量としてLD 2包又はHD 1包までとする。


適用上の注意

調製時:本品6.8523g(モビコール配合内用剤LD 1包)あたりコップ1/3程度(約60mL)又は本品13.7046g(モビコール配合内用剤HD 1包)あたりコップ2/3程度(約120mL)の水に溶解する。

溶解後は速やかに服用すること。

2024年6月23日日曜日

職域での動脈硬化予防対策

職域での動脈硬化予防対策をGLに基づき解説

https://medical-tribune.co.jp/news/2023/0810557832/

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・動脈硬化は加齢や生活習慣、生活習慣病により引き起こされる病態だが、自覚症状がほとんどないという特徴がある。動脈硬化は進行すると脳血管イベントや心血管イベントの発生につながるため、職域での早期発見・治療による重症化の予防が重要となる。


・2012年版および2017年版GLでは、冠動脈疾患(CAD)のみがアウトカムとなっており、もう1つの重要な動脈硬化性疾患であるアテローム血栓性脳梗塞はアウトカムに含まれていないという課題があった。


・GL2022では、CADとアテローム血栓性脳梗塞を合わせた動脈硬化性疾患をアウトカムに絶対リスクを評価するツールとして久山町スコアを採用。同スコアでは、①性、②収縮期血圧、③糖代謝異常の有無、④血清LDL-コレステロール(LDL-C)、⑤血清HDL-コレステロール(HDL-C)、⑥喫煙の有無―を点数化し、合計点数と年齢階層を組み合わせて10年間の絶対リスクで層別化すした。


https://wsnoopy.wixsite.com/mysite/post/%E8%81%B7%E5%9F%9F%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%8B%95%E8%84%88%E7%A1%AC%E5%8C%96%E4%BA%88%E9%98%B2%E5%AF%BE%E7%AD%96

2024年6月21日金曜日

アルツハイマー病患者における全く新しい血液マーカーを発見

アルツハイマー病患者における全く新しい血液マーカーを発見https://www.city.kobe.lg.jp/documents/69733/tenpushiryo.pdf                 神戸医療産業都市推進機構などはアルツハイマー病の診断につながる可能性がある新しいマーカーをマウスを使った実験で見つけた。                                    

アルツハイマー病患者では、白血球の働きが低下し、代謝の状態が変化していた。           

血液中の白血球の状態を測定すれば、新しい診断マーカーとなりうる。                

白血球の働きを高めれば、新しい神経細胞の産生を促し、記憶障害を改善する根本治療につながる可能性がある。



2024年6月18日火曜日

Mondor病

 Mondor病は、1939年にフランスの外科医 Henri Mondorによって初めて報告された疾患で、皮下に索状の硬結を触知する表在性血栓性静脈炎である。好発部位は乳房および前胸部、上腹部であるが、稀に腋窩部、上肢,鼠径部,陰茎などにも生じることがある。

病変は通常片側性である。

中年女性に好発し,女性は男性に比べて3~14倍多く発症する。

原因として、特発性が最も多く(約半数)、他に過度な運動、きつい衣服による静脈の圧迫、外傷、胸部外科手術・生検、放射線療法、ホルモン療法、血栓形成傾向、感染症、長期の授乳歴、リウマチ疾患などがある。

6.3%の症例で乳癌が発見されたとの報告あるが、乳癌との関連は明らかにはなっていない。

索状の硬結に一致して圧痛や突っ張るような痛み、皮膚の陥凹がみられるのが特徴であるが、無症状のこともある。

また、体を捻ったり伸ばしたりする動作の際に、皮膚の伸展により静脈も伸展されて疼痛が増強することがある。

通常は皮膚に炎症所見はみられないが、発赤などの皮膚所見を伴うこともある。


詳細な病歴聴取と身体診察によって診断できるが,超音波検査が有用なこともある。

典型的には、血栓で閉寒した表在静脈は無 ~ 低エコーの管腔構造として描出され、非圧縮性で内部には有意な血流所見を認めない。

4~8週以内に自然治癒するが,疼痛が強い場合は非ステロイド性抗炎症薬を用いた対症療法を行う。

13%の症例で再建したとの報告がある。

急性疾患や数日~数週間の経過で自然治癒する疾患では,診察時に有用な身体所見が消失

し、診断が困難な場合がある。


しかし近年,患者自身がスマートフォンで撮影した画像が、特に皮膚疾患に対して有用かつ正確な診断ツールとして期待されている。

日内会誌 113巻6号 福島県立医大 加藤瞳 先生)




(ドクター用)『関節リウマチにおけるメトトレキサート(MTX)使用と診療の手引き2023年版』のポイント

 (ドクター用)『関節リウマチにおけるメトトレキサート(MTX)使用と診療の手引き2023年版』のポイント

https://medical.cat.eisai.jp/clinician/vol71/no698/pdf/sp08_698.pdf

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関節リウマチ(RA)は「多様であるため、患者は作用機序の異なる複数の薬剤を必要とする。生涯を通じて、いくつもの治療を順番に必要とするかもしれない」と日本リウマチ学会のガイドラインに記戦されている。

 


治療薬としてわが国で承認されている従来型合成抗リウマチ薬(csDMARDs)は、2023年10月時点において12製剤である。ただし、国内のガイドラインで推奨されているのは、国内承認順に注射金製剤、ブシラミン、サラゾスルファピリジン(SASP)、メトトレキサート(MTX)、レフルノミド、タクロリムス、イグラチモドの7製剤である。

 

RA治療において、まずcsDMARDsで開始することが米国および欧州のリウマチ学会でも推奨されている。

その最大の理由は、csDMARDsの薬剤費用負担か小さいことによる。すなわち、治療薬の選択は有効佳・安全性・費用負担のバランスが最適となるように考慮すべきであり、csDMARDsの中で継続率、有効性・安全性を考慮するとMTXが第一選択薬となりやすい。

 

ただし、わが国では超高齢社会であり、禁忌に近いレベルの慎重投与や複数の慎重投与項目に該当する患者が少なくないことから、個々の患者のリスク・ベネフィットバランスに鑑みて第一選択薬としても第二選択薬以降としても使用可能としている。 


投与禁忌事項の改訂

MTXの投与禁忌に妊娠、重症感染症、重大(高度)な血液・リンパ系や肝臓、腎臓、呼吸器な

どの障害を有する患者などが該当するため、MTXを開始する前に行うスクリーニング検査は、生物学的製剤やヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬と同様に必要であり、感染症においては、結核、肝炎ウイルス、そしてニューモシスチスを含めた真菌なども含まれる。しかしながら、軽度の間質性肺疾患や悪性腫瘍の合併がMTXの投与禁忌には該当しない。

そして今回の改訂で胸水・腹水は治療のための穿刺・排液を要する大量貯留のみが禁忌、それ以下の貯留は慎重投与となった。

さらに、高度な呼吸器障害の目安から呼吸機能検査による拘束性障害の存在は削除となり、より実臨床に即したものとなっている。


葉酸製剤の併用とMTX増量

葉酸製剤の併用がMTXの開始用量を問わず全てのMTX開始患者に推奨されたことは、今回の改訂における重要なポイントである。


*MTXの適正使用と安全性

MTXの適正使用のためには、適切なスクリーニングとモニタリングが不可欠であり、全ての患者に末梢血検査、生化学検査、免疫学的検査、炎症マーカー、尿一般検査に加えて、肝炎ウイルス検査、胸部および手足や罹患関節の単純X線検査、結核検査の実施を推奨している。MTX開始後の開始ま、モニタリングも多くの項目では、開始または増量後早期は2~4週毎、それ以降は4~12週毎となっている。

これらは、重篤副作用を可能な限り回避、または早期に発見するためのものであり、特に骨髄障害やリンパ増殖性疾患などの血液・リンパ系障害と、間質性肺疾患や呼吸器感染症などの呼吸器病変が重要である。


(東邦大学医学部 内科学講座膠原病学分野 亀田秀人教授)

   CLINICIAN 2024 NO.698


関連サイト

(ドクター用) MTX使用の手引き

https://aobazuku.wordpress.com/2024/06/18/%ef%bc%88%e3%83%89%e3%82%af%e3%82%bf%e3%83%bc%e7%94%a8%e3%80%80mtx%e4%bd%bf%e7%94%a8%e3%81%ae%e6%89%8b%e5%bc%95%e3%81%8d-2023%ef%bc%89/

2024年6月6日木曜日

パーキンソン病の原因物質、脳内の可視化に成功 治療法開発に期待

神経の難病「パーキンソン病」や「レビー小体型認知症」の原因物質が患者の脳内にたまっている様子を画像でとらえることに、量子科学技術研究開発機構(QST)などの研究チームが世界で初めて成功した。

アルツハイマー病のように、原因物質を標的とした治療法の開発につながると期待される。


手足がふるえたり体がこわばったりする難病のパーキンソン病や、幻視が特徴とされるレビー小体型認知症は、脳の細胞に「αシヌクレイン」というたんぱく質がたまることが知られる。

ただ、体外から陽電子放射断層撮影(PET)などで画像化することはできず、標的とする治療法も確立していない。


そこで研究チームは、PETで画像化できているアルツハイマー病の原因物質に着目この物質に結合するPET用の薬剤を改良し、αシヌクレインに強く結合する分子構造の薬剤を開発した。



朝日デジタル 2024.6.6

https://www.asahi.com/articles/ASS652V7RS65ULBH00GM.html