伝染性単核球症を疑ったら鑑別に挙げるべき疾患
伝染性単核球症を疑ったら鑑別に挙げるべき早期診断が欠かせないあの疾患
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/moyamoya/202406/584721.html
(要ログイン)
Bウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)による、若年層でよく見られる感染症とのイメージがありますが、実はEBV以外にも同様の症状を引き起こすウイルスが存在する。
EBVが体内に入り、標的細胞であるBリンパ球に感染すると、感染したBリンパ球を排除するためにTリンパ球が活性化され増加する。
活性化したTリンパ球は通常より大きく、核が特徴的な形をしており、「異型リンパ球」と呼ばれる。
異型リンパ球は、ウイルスに感染したBリンパ球を攻撃し、病気の拡散を防ぐ重要な役割を担う。
これらの免疫システムの活動は肝臓と脾臓に負荷を掛けることから、肝脾腫が引き起こされる。
このように、伝染性単核球症の症状は、体がウイルスと戦おうとする免疫システムの反応によるもので、異型リンパ球の増加や肝脾腫は、体がウイルスに対抗している証拠といえる。
伝染性単核球症の約90%はEBVによるものとされているが、EBV以外にもサイトメガロウイルス(CMV)やヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのように似た症状を引き起こすウイルスが存在する。
CMV やHIVによる伝染性単核球症様の症状は全体的に軽度だ。
CMVの場合は、咽頭痛を伴わず、異型リンパ球の数が少なく、リンパ節腫脹が軽度であるのが一般的だ。
EBVとCMVの感染に対する特別な治療法はなく、主に解熱薬を投与した上での経過観察が行われる。
一方、HIV感染症は早期診断が予後の改善に最も有効なアプローチであり、診断の価値は非常に高いといえる。
さらに、HIVに感染した人は生涯で2~5人にHIVを広めるとされており、初期段階での診断は感染の拡大を防ぐ意味でも重要となる。
また、治療薬は比較的高価で、最新の薬剤は1日当たり約7000円、40年間で1億円以上の治療費がかかることになる。
急性HIV感染症を早期に診断できれば、前述の通り感染者(2~5人)を増やさずに済むので、経済的に見ても単純計算で2~5億円の医療費削減に貢献する可能性がある。
両疾患で共通する症状には、全身倦怠感、発熱、咽頭炎、頭痛など、急性上気道炎でもよく見られるものが含まれる。
これらを認めるケースでは、伝染性単核球症や急性HIV感染症も鑑別診断に挙げることになります。
相違点として、伝染性単核球症ではほぼ全例でリンパ節腫脹を伴うが、急性HIV感染症では頻度は約40%と少ない。
また、急性HIV感染症では約半数で皮疹を呈するのに対し、伝染性単核球症ではほとんど見られないのも特徴の1つ。
したがって、急性HIV感染症の可能性を考えたら、皮膚症状に注意を払う必要がある。
まとめ
*伝染性単核球症を疑う場合は、HIV感染症の可能性も考慮しよう。
*急性HIV感染症の早期診断は、患者本人の予後を著しく改善するだけでなく、感染拡大防止にもつながるため、診断価値が非常に高い。
伝染性単核球症とHIV
https://aobazuku.wordpress.com/wp-admin/post.php?post=2251&action=edit
(症状別頻度の図)