2024年6月18日火曜日

Mondor病

 Mondor病は、1939年にフランスの外科医 Henri Mondorによって初めて報告された疾患で、皮下に索状の硬結を触知する表在性血栓性静脈炎である。好発部位は乳房および前胸部、上腹部であるが、稀に腋窩部、上肢,鼠径部,陰茎などにも生じることがある。

病変は通常片側性である。

中年女性に好発し,女性は男性に比べて3~14倍多く発症する。

原因として、特発性が最も多く(約半数)、他に過度な運動、きつい衣服による静脈の圧迫、外傷、胸部外科手術・生検、放射線療法、ホルモン療法、血栓形成傾向、感染症、長期の授乳歴、リウマチ疾患などがある。

6.3%の症例で乳癌が発見されたとの報告あるが、乳癌との関連は明らかにはなっていない。

索状の硬結に一致して圧痛や突っ張るような痛み、皮膚の陥凹がみられるのが特徴であるが、無症状のこともある。

また、体を捻ったり伸ばしたりする動作の際に、皮膚の伸展により静脈も伸展されて疼痛が増強することがある。

通常は皮膚に炎症所見はみられないが、発赤などの皮膚所見を伴うこともある。


詳細な病歴聴取と身体診察によって診断できるが,超音波検査が有用なこともある。

典型的には、血栓で閉寒した表在静脈は無 ~ 低エコーの管腔構造として描出され、非圧縮性で内部には有意な血流所見を認めない。

4~8週以内に自然治癒するが,疼痛が強い場合は非ステロイド性抗炎症薬を用いた対症療法を行う。

13%の症例で再建したとの報告がある。

急性疾患や数日~数週間の経過で自然治癒する疾患では,診察時に有用な身体所見が消失

し、診断が困難な場合がある。


しかし近年,患者自身がスマートフォンで撮影した画像が、特に皮膚疾患に対して有用かつ正確な診断ツールとして期待されている。

日内会誌 113巻6号 福島県立医大 加藤瞳 先生)




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