MRリニアック
MRリニアック 最先端治療装置に期待
前立腺がんに対する放射線治療に「週末2回照射」がある。
2週連続で土曜に1回ずつ、計2回の照射で治療が終わる。週末2回照射は新たな治療スタイルとして反響を呼んだ。
MRリニアックにはさらに、治療中にがん病巣や正常臓器の位置をリアルタイムに「見ながら」照射できるという、これまでにないメリットもある。
前立腺のすぐ後ろに位置する直腸に放射線が過大に照射されると、肛門出血の原因になることがある。
直腸の動きを注視しながら照射できるため、大線量を前立腺に集中することが可能になる。
この技術は、膵臓がんの根治的放射線治療でも重要な役割を果たす。
膵臓がんは日本人のがん死亡の第3位だが、早期発見が難しく、手術ができるのは3割前後にとどまる。
放射線でダメージを受けやすい小腸に取り囲まれているため、放射線治療も困難だった。
しかし、MRリニアックは膵臓がんの放射線治療に革命をもたらしつつある。
現役世代にとって「治療と仕事の両立」がかなうことはもちろん、高齢の親世代のがん治療を付き添いなどでサポートする人たちにとってもメリットが大きい。
週末2回照射に不可欠なのが、MRI(磁気共鳴画像装置)と放射線治療器(リニアック)を一体化した「MRリニアック」という最先端の放射線治療装置だ。
これまでの高精度放射線治療装置は、リニアックとCT撮影装置が一体化した「CTリニアック」が主流だった。
しかし、今やMRIがCTに代わり画像診断の主役となっている。
提供される画像の情報量はMRIが圧倒的にCTを上回るためだ。
世界の13施設が参加した臨床試験で、手術が難しい進行膵臓がん患者136人に、MRIでがんの位置を毎回確認しながら高精度に放射線を集中させる「SMART」という方法を使った。
治療はたった5回で完了し、1年後の生存率は65%、がんの再発を抑えられた人は83%に上った。
とりわけ重い副作用が一人も出なかったという結果が、治療の安全性の高さを示している
がんの場所が毎日少しずつ変わっても、たとえ照射中に動いたとしても、変化に合わせて
治療内容を調整できるのがこの技術の強みです。
高齢などの理由で手術が難しい膵臓がん患者にとって、MRリニアックによる高精度放射線治療は新たな根治的治療の選択肢となる。
日経新聞・朝刊 2025.6.25 東京大学・中川 恵一 特任教授
関連サイト
MRリニアックの臨床導入と普及に向けて
https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/journal/JASTRO_NEWSLETTER_146_tokushu.pdf
(日本放射線腫瘍学会)
MRリニアックで治療が5回で終了
https://www.hosp.tohoku.ac.jp/webmagazine/feature/2932/
(東北大学)
新型「リニアック」本格稼働
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2019/dr3e64000000tlkz-att/fukuhp_Linac.pdf
(横浜市大)
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