アニサキス寄生、日本海でも増加
アニサキス寄生、日本海でも増加 食中毒の原因種、マサバに「飲食店などに周知を」
太平洋側のマサバが食中毒の主要感染源とされる寄生虫アニサキスについて、日本海側でも食中毒を引き起こす種類の寄生が増えていることが内閣府食品安全委員会の研究で分かった。
調査した国立感染症研究所では「食中毒リスクは太平洋側と変わらなくなっており、行政は消費者や飲食店に必要な対応を周知すべきだ」と指摘している。
アニサキスは幼虫が魚介類の内臓に寄生し、人間の体内に入ると、みぞおちなどの激しい痛みや嘔吐といった症状を引き起こす。内臓から身に移動しやすい種類「As」の寄生が太平洋のマサバなどに目立ち、日本海や東シナ海では、身に移動しにくい「AP」が多いとされてきた。
Apは内臓を除去すれば感染リスクはAsに比べて低いと考えられていた。
研究では2019~21年度、海域別に寄生状況調査を実施。太平洋で漁獲されたマサバ70尾では、見つかった幼虫のうち半数が身の部分にいた。身からは1尾当たり平均15.3匹を検出し、全てAsだった。これに対し目本海の67尾では幼虫の約35%を身で確認。
1尾当たり平均2.1匹で、ほぼ全てがAsだった。
22、23年度にも日本海の2海域で調査したところ、身で確認した幼虫の割合は、おおむね同じだった。1尾当たり平均のAsは13.6匹、9.7匹。「身から検出した幼虫の95%以上がAsで、わずか2~3年のうちに太平洋のマサバとリスクが変わらなくなった」とした。
日本海でアニサキス食中毒のリスクが高いマサバが目立ってきたことに関し国立感染症研究所は「原因は不明だが、海流や海水温の変化などが関係している可能性がある」と話す。
食中毒発生件数の中でアニサキスは、厚生労働省が統計を開始した13年には88件だったが年々増加し、23年には432件と全体の42%を占めた。
(日経・朝刊 2025.3.21)
アニサキスとは
魚介類や海生哺乳類に寄生する線虫。幼虫は長さ2~3センチで、クジラなどの体内で成虫になる。幼虫が寄生したサバやアジ、サンマ、カツオなどを、人間が生や加熱不十分の状態で食べると食中毒の原因になる。
胃壁に刺入する急性胃アニサキス症のほか、じんましんなどの症状もある。幼虫は通常の調理で使う酢や塩分の濃度で死なないため、中心部をマイナス20度で24時間冷凍するか、60度で1分加熱することが有効とされる。
コメント;
「中心部をマイナス20度で24時間冷凍」は家庭用冷蔵庫では難しい条件です。一般的な家庭用冷凍庫の設定は、マイナス18度までとなっており、家庭用冷凍庫の場合は、2日以上の冷凍が必要となります。
アニサキスによる食中毒を予防しましょう(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカなどの魚介類に寄生する。アニサキス幼虫は、寄生している魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することが知られている。
・ アニサキス食中毒で特定されている魚種
魚種別にサバ→カツオ→サンマ→アジ→イワシの順に多い。
・ 生食だけでなく加熱不十分、あるいは塩漬けや酢漬けの状態でも感染する。
・ヒトが感染魚を食べても、ほとんどの幼虫は感染を起こすことなく便中に排出されるが、胃の中で自由になった幼虫が、胃粘膜や腸粘膜に付着し部分的に穿入すると、アニサキス症を発症する。
・緩和型は症状が軽微で自覚症状もない場合が多いが、劇症型の胃アニサキス症では喫食後8時間以内、劇症型の腸アニサキス症は数時間から数日後に、持続する激しい腹痛や差し込むような痛みが起こり、吐き気や嘔吐を伴うこともある。
・これまではアニサキス症に特異的に効果のある治療薬は存在しないと言われてきたが、2011年に木クレオソートを含有する正露丸(第2類医薬品)の内服で、胃アニサキス症の症状である強い上腹部痛が消失した症例が報告された。アニサキス症が疑われた患者が正露丸を服用後、1~2分で痛みが消失し、その後の内視鏡検査で動きのない白色の寄生虫を胃粘膜より採取し、アニサキス症と診断された。正露丸の最大服用量である1日9粒(木クレオソート400mg)であれば、十分効果が期待できると考えられる。