2025年3月22日土曜日

アニサキス寄生、日本海でも増加

アニサキス寄生、日本海でも増加 食中毒の原因種、マサバに「飲食店などに周知を」

太平洋側のマサバが食中毒の主要感染源とされる寄生虫アニサキスについて、日本海側でも食中毒を引き起こす種類の寄生が増えていることが内閣府食品安全委員会の研究で分かった。 

調査した国立感染症研究所では「食中毒リスクは太平洋側と変わらなくなっており、行政は消費者や飲食店に必要な対応を周知すべきだ」と指摘している。


アニサキスは幼虫が魚介類の内臓に寄生し、人間の体内に入ると、みぞおちなどの激しい痛みや嘔吐といった症状を引き起こす。内臓から身に移動しやすい種類「As」の寄生が太平洋のマサバなどに目立ち、日本海や東シナ海では、身に移動しにくい「AP」が多いとされてきた。

Apは内臓を除去すれば感染リスクはAsに比べて低いと考えられていた。


研究では2019~21年度、海域別に寄生状況調査を実施。太平洋で漁獲されたマサバ70尾では、見つかった幼虫のうち半数が身の部分にいた。身からは1尾当たり平均15.3匹を検出し、全てAsだった。これに対し目本海の67尾では幼虫の約35%を身で確認。

1尾当たり平均2.1匹で、ほぼ全てがAsだった。

 

22、23年度にも日本海の2海域で調査したところ、身で確認した幼虫の割合は、おおむね同じだった。1尾当たり平均のAsは13.6匹、9.7匹。「身から検出した幼虫の95%以上がAsで、わずか2~3年のうちに太平洋のマサバとリスクが変わらなくなった」とした。

 

日本海でアニサキス食中毒のリスクが高いマサバが目立ってきたことに関し国立感染症研究所は「原因は不明だが、海流や海水温の変化などが関係している可能性がある」と話す。

食中毒発生件数の中でアニサキスは、厚生労働省が統計を開始した13年には88件だったが年々増加し、23年には432件と全体の42%を占めた。

(日経・朝刊 2025.3.21)


アニサキスとは 

魚介類や海生哺乳類に寄生する線虫。幼虫は長さ2~3センチで、クジラなどの体内で成虫になる。幼虫が寄生したサバやアジ、サンマ、カツオなどを、人間が生や加熱不十分の状態で食べると食中毒の原因になる。

胃壁に刺入する急性胃アニサキス症のほか、じんましんなどの症状もある。幼虫は通常の調理で使う酢や塩分の濃度で死なないため、中心部をマイナス20度で24時間冷凍するか、60度で1分加熱することが有効とされる。


コメント;

「中心部をマイナス20度で24時間冷凍」は家庭用冷蔵庫では難しい条件です。一般的な家庭用冷凍庫の設定は、マイナス18度までとなっており、家庭用冷凍庫の場合は、2日以上の冷凍が必要となります。


アニサキスによる食中毒を予防しましょう(厚労省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html

サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカなどの魚介類に寄生する。アニサキス幼虫は、寄生している魚介類が死亡し、時間が経過すると内臓から筋肉に移動することが知られている。



・ アニサキス食中毒で特定されている魚種

魚種別にサバ→カツオ→サンマ→アジ→イワシの順に多い。


  生食だけでなく加熱不十分、あるいは塩漬けや酢漬けの状態でも感染する。


・ヒトが感染魚を食べても、ほとんどの幼虫は感染を起こすことなく便中に排出されるが、胃の中で自由になった幼虫が、胃粘膜や腸粘膜に付着し部分的に穿入すると、アニサキス症を発症する。


・緩和型は症状が軽微で自覚症状もない場合が多いが、劇症型の胃アニサキス症では喫食後8時間以内、劇症型の腸アニサキス症は数時間から数日後に、持続する激しい腹痛や差し込むような痛みが起こり、吐き気や嘔吐を伴うこともある。


・これまではアニサキス症に特異的に効果のある治療薬は存在しないと言われてきたが、2011年に木クレオソートを含有する正露丸(第2類医薬品)の内服で、胃アニサキス症の症状である強い上腹部痛が消失した症例が報告された。アニサキス症が疑われた患者が正露丸を服用後、1~2分で痛みが消失し、その後の内視鏡検査で動きのない白色の寄生虫を胃粘膜より採取し、アニサキス症と診断された。正露丸の最大服用量である1日9粒(木クレオソート400mg)であれば、十分効果が期待できると考えられる。

2025年3月14日金曜日

花粉症悪化のリスクが高い「意外な食べ物」

 花粉症悪化のリスクが高い「意外な食べ物」

https://melos.media/wellness/227182/?utm_source=antenna

・過剰な免疫反応を抑制する「制御性T細胞」の働きが鈍ると、花粉症の症状が悪化する。 


・「制御性T細胞」の働きが鈍る原因のひとつは「腸内環境の悪化」。


・赤身肉を食べ過ぎると腸内環境が悪化しやすい。赤身肉に含まれるアミノ酸は、腸内細菌によって分解されると硫化水素を生成する。硫化水素は腸管の粘膜バリア機能を低下させ、炎症を引き起こす可能性がある。

(最近話題の「下水管の破損」を想起させます)


・また、肉の脂身に含まれる飽和脂肪酸は、胆汁の分泌を促進する。この胆汁も腸内細菌によって分解されると、二次胆汁酸に変換される。二次胆汁酸もまた、腸内の炎症を引き起こし、腸管バリア機能を低下させる可能性がある。腸内で炎症が引き起こされると、「制御性T細胞」の数や機能が低下し、免疫抑制がうまく働かなくなる。その結果、花粉に対する過剰な免疫反応が抑えられず、花粉症の症状が現れやすくなると考えられている。


・発酵性食物繊維は、腸内細菌によって発酵され、酪酸などの短鎖脂肪酸を生成する。この短鎖脂肪酸が腸内環境を整え、免疫機能のバランスを保つ上で重要な役割を果たしている。たとえば「もち麦」。βグルカンというタイプの発酵性食物繊維を豊富に含んでいるのでオススメだ。

2025年3月9日日曜日

胃カメラによる早期膵臓癌の検出

胃カメラ中に採取した膵液のKRAS遺伝子変異検査が切除可能な早期膵臓癌の検出に有用な可能

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/202502/587753.html

・胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査中に採取した膵液を用いて、膵臓癌に多くみられるKRAS(ケーラス)遺伝子変異の変異量を調べることが、切除可能な早期膵臓癌の検出に有用である可能性が大阪大学から発表された。国内多施設共同で行われた、特定臨床研究の結果から明らかになった。まずは膵癌家族歴のある人などの膵臓癌ハイリスク者を対象として胃癌検診に組み込み、スクリーニングを行うことを目指すという。

コメント;膵臓癌は国内で年約4万4千人が診断を受け4万人がなくなる。つまり、非常に死亡率の高いがんで難治性癌の筆頭とされ5年後の生存率は約10%にとどまります。


・早期検出が難しい膵臓癌においてKRAS遺伝子変異の検出が有効なことは知られていたが、どのような方法で検査を行えば良いかは明確になっていない。胃カメラ検査で得た膵液でKRAS遺伝子変異が検出できることが示されたことで、早期検出の可能性が高まりそうだ。

コメント;膵臓癌の約94%はKRAS遺伝子に変異があり、がんの存在を示す目印といわれています。血液などでは早期発見は難しいといわれていました。膵癌のほとんどが膵液の通り道である膵管の一部から発生します。


・ただし、実際に臨床で使うには残されている課題もある。膵液の分泌を促進することで検査を補助する合成ヒトセクレチンは、国内未承認。今回は特定臨床研究の枠組みで薬剤を用意したが、実用化には日本での承認と供給体制が必要になる。また、遺伝子検査の費用なども今後の検討課題になる。


・発表された特定臨床研究は、初診時に健常者だった75人と、初診時に手術適応となる膵臓癌だと診断された89人を合わせた164人を対象に国内の10施設で行われた。ヒト合成セクレチン0.2μg/kgを静脈投与して膵液の分泌を促した後、上部消化管内視鏡検査を開始。主膵管の出口である十二指腸乳頭部を生理食塩水で洗浄後、専用のカテーテル(S&Yチューブ、一般医療機器として製造販売承認取得済み)で膵液の含まれた十二指腸洗浄液を回収。十二指腸洗浄回収液を用いてKRAS遺伝子の変異量を測定した。KRAS遺伝子の変異量測定は、膵臓癌で高頻度に観察される4つのKRAS遺伝子変異パターン(KRAS G12D、KRAS G12V、KRAS G12R、KRAS G12C)をPCR法でまとめて行った。膵臓癌におけるKRAS変異パターンの約94%をカバーしているという。


・10万コピー当たりのKRAS遺伝子変異数を比較したところ、有意に手術を実施した早期膵臓癌の集団で、KRAS遺伝子の変異数が多かった。


・ROC曲線を用いて解析したところ、KRAS遺伝子変異の検査が他の2つに比べて有意に精度が高かった。


今後の予定として、尾道コホートなどを活用しつつ、5年を目安に実用化に踏み切りたいとしている。