2025年11月28日金曜日

インフルエンザ新変異株「K亜系統」が流行 今年(2025~2026)のワクチンは効果があるのか?

インフルエンザ新変異株「K亜系統」が流行 今年のワクチンは効果があるのか?

https://forbesjapan.com/articles/detail/85392

(Forbes JAPAN 2025.11.21)

・インフルエンザA型H3N2亜型の新たな変異株「K亜系統」が、日本を含む北半球全域で大流行している。同変異株は、日本、英国、カナダを含む多くの国々で優勢となっている。


・実際、日本や英国では感染者が急増している。米疾病対策センター(CDC)によると、米国ではインフルエンザの流行は今のところ低い水準にあるものの、感染者は増加傾向にあり、A型H3N2亜型が主流となっている。


インフルエンザA型H3N2亜型の症状

・インフルエンザA型H3N2亜型の一般的な症状は、すべてのインフルエンザウイルスと同様、発熱、咳、鼻水、倦怠感、筋肉痛、悪寒などが含まれる。

ただし、H3N2亜型の感染は全年齢層で重症化する傾向があり、特に小児と高齢者は注意が必要だ。


・具体的には、H3N2亜型のインフルエンザに感染した患者は高熱を発症する確率が高く、呼吸困難や脱水症状などの合併症を引き起こし、入院が必要となることもある。

前回H3N2亜型が主流となったのは、2016~17年だった。


新変異株のK亜系統とは

・K亜系統は6月に欧州で初めて確認され、それ以降、北半球全域に拡大し続けている。K亜系統には7つの変異が見られる。


今年のインフルエンザワクチンはK亜系統に対して効果があるのか?

・現在の2025~26年インフルエンザワクチンは3価ワクチンで、2種類のA型インフルエンザウイルス株(H1N1亜型とH3N2亜型)と1種類のB型インフルエンザウイルス株に対する予防効果がある。


・ワクチンはH3N2亜型に対する予防効果を持つが、ワクチンの調製が開始されたのはK亜系統が確認される前の2月の時点だったため、変異したK亜系統には対応していない。


・だが、これはワクチンを接種しなくても良いという意味ではない。ワクチン接種の目的は感染を完全に回避することではなく、重症化や入院、死亡の確率を減らすことだ。ワクチンはH3N2亜型に対する予防効果を発揮するため、K亜系統に対する完全な一致ではないものの、ある程度の効果を期待することができる。


・英国のデータによると、入院の可能性について、K亜系統に対するワクチンの予防効果は子どもの場合で最大75%、成人の場合は最大40%に達した。

コメント;

K亜系統に対するワクチンの予防効果は、大人より小児で高い。ただし、予防効果という表現は、どうしても発症(発病)予防効果と早とちりしやすい。しかし、あくまでも、ここでいう予防効果は、発症を含め重症化や入院、死亡の確率を減らすことなのだ。


インフルエンザの流行期に身を守るには?

・インフルエンザは通常12~2月にかけて流行のピークを迎えるが、健康を守るために実行できる対策がある。まず、インフルエンザの予防接種を受けることだ。CDCは、生後6カ月以上のすべての人にインフルエンザワクチンの接種を推奨している。また、ウイルスが容易に拡散する混雑した屋内空間を避けることも有効だ。混雑した屋内に入る必要がある場合は、ウイルスを吸い込む可能性を減らすため、N95やKN95など医療用マスクの着用を検討しよう。最後に、手をこまめに20秒間洗い、咳やくしゃみをする時に鼻と口を覆うことで、インフルエンザの感染拡大を大幅に抑えることができる。 

コメント;

20秒間は、昔から「ハッピーバースデー」を歌い終える長さといわれている。ちなみに「君が代」を自分で歌って計測してみたら35秒だった。

2025年11月21日金曜日

2大血糖降下薬のフレイルへの懸念は払拭されたか

2大血糖降下薬のフレイルへの懸念は払拭されたか                         GLP-1RA、SGLT2阻害薬のリスクを米・大規模データで検証                https://medical-tribune.co.jp/rensai/articles/?blogid=11&entryid=569889            要ログイン)

日本糖尿病学会も可能性を指摘

GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)はその減量作用に期待が集まる一方、脂肪だけでなく筋肉の減少に伴う、サルコペニアやフレイルのリスク上昇が懸念されている。


日本糖尿病学会が昨年(2024年)発出した『インクレチン関連薬の安全な使用に関するRecommendation 第2版』にも、「食事摂取量の不足した高齢者では、体重減少からサルコペニア・フレイルにいたる可能性がある」との記載がある。


SGLT2阻害薬も同様に、尿糖排出に起因する異化亢進による筋肉量減少(サルコペニア)の可能性が、一部で指摘されている。


これらの懸念は正鵠を射ているのか。


この点を米国の大規模データで検証した結果が、11月13日、Diabetes Careに掲載された。

著者は米国・Harvard Medical SchoolのChan Mi Park氏ら。

同氏らによると、両薬剤とフレイルの関連を検討した初めての研究だという。


論文抄録

Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors, Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists, and Frailty Progression in Older Adults With Type 2 Diabetes

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41232081/

この英文抄録に記載された結論;

GLP-1受容体作動薬とSGLT-2受容体作動薬は、心血管系への有益性とは独立したメカニズムによってフレイルの進行を遅らせる可能性がある。

今後の試験でこれらの予備的知見が確認されることを期待する。



関連サイト

SGLT2阻害薬は2型糖尿病患者の転倒リスクを高める

https://dm-rg.net/news/3f6490de-21a6-4f00-9af0-235c832698c6

とくにSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用は、転倒リスクを大幅に高めることが示された。


SGLT2阻害薬で糖尿病患者の転倒リスク上昇

https://www.carenet.com/news/general/hdn/60940

・糖尿病患者は一般的に転倒リスクが高く、その理由として従来、神経障害や網膜症といった合併症の影響とともに、血糖降下薬使用による低血糖の影響が指摘されていた。さらに比較的近年になり、血糖降下以外の多面的作用が注目され多用されるようになった、SGLT2-iやGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関しては、体重減少とともに筋肉量を減少させることがあり、その作用を介して転倒リスクを高める可能性も考えられる。

・SGLT2-iの処方は転倒の独立したリスク因子であり、一方でGLP-1RAの処方の影響は統計的に非有意だった。ただし、SGLT2-iとGLP-1RAが併用されていた場合の転倒リスクは、SGLT2-i単独よりも高かった。従って、2型糖尿病患者にこれらの薬剤を処方する際には、転倒リスクを考慮することが重要である。