CEAとCA19-9
CEAとCA19-9
CEA
がん細胞から分泌される糖タンパクで、多くの腺がんにおいて血中濃度の上昇が報告されているが、特に大腸がんで比較的高頻度に高値を示すため有用性が高い。
しかし、他のがんや非がん性疾患、喫煙などでも上昇することがあるため、特異性には限界がある。
正常な細胞(食道、胃、大腸、胆囊、胆管、膵、乳腺、皮膚など)や腫瘍性疾患でない慢性呼吸器疾患、肝疾患、糖尿病などでも高値を示すことがある。
また、喫煙でも高値を示すため、既往歴や併存疾患のチェックが必要である。
基準範囲
CEA:5ng/mL 以下(非喫煙者)、10ng/mL 以下(喫煙者)
コメント;
喫煙者と非喫煙者とでは正常値が異なることに注意。
異常値を示す疾患
がん性疾患には、大腸がん、乳がん、肺がん,胃がん、膵がんなど、非がん性疾患には肝炎、肝硬変、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)があり、そのほかに喫煙がある。
CA19-9
CA19-9 は I 型糖鎖抗原で、主に消化器系のがん、特に膵がんや胆道がんで高値を示すことが知られているが、大腸がんでも上昇することがある。
ただし、大腸がんでの特異性は低いため、CEA と組み合わせて使用される。
基準範囲
CA19-9:37U/mL 以下
異常値を示す疾患
がん性疾患には、大腸がん以外に、膵がん、胆道がん、胃がんなど、非がん性疾患には胆石症、胆管炎、慢性膵炎、肝硬変などがある。
CEA と CA19-9 は良性疾患でも上昇することがあり、特に CA19-9 においては肝・胆道系の炎症で大きく影響を受けることがある。
一方、CEA は大腸がんの状況をよく反映していることが多く、より信頼性の高い大腸がんの腫瘍マーカーである。
大腸がんにおける CA19-9 は感度・特異度とも CEA よりも低く、その役割はCEAの補助的な意義が大きいが、CEA陰性の大腸がんでは重要である。
CA19-9 が大きく上昇している場合には、遠隔転移あるいは腹膜播種が併存していることが多く注意が必要である。
早期診断
早期大腸がんにおいては、CEA、CA19-9 共に陽性率が低く、有用性が低い。
再発診断
術前から CEA あるいは CA19-9 が上昇している大腸がんの場合は、手術にて治癒切除がなされた場合は正常値まで低下し、再発すると再上昇してくるため、きわめて有用な再発マーカーとなる。
一方、術前に上昇していない場合でも、再発して腫瘍量が増加すると上昇してくることが多くある。
「大腸癌治療ガイドライン 医師用 2024 年版」においても、pStage I~III 大腸がんの治癒切除後に推奨されるサーベイランススケジュールとして、3 年目までは 3 か月ごと、3 年目以降は 6 か月ごとに 5 年目までの腫瘍マーカーの採血を進めている。
ただし、CEA や CA19-9 を産生しない大腸がんもあるし,再発形式によっては再上昇しない場合もあただし,前述したようにCEA や CA19-9 を産生しない大腸がんもある
し,再発形式によっては再上昇しない場合もありうるので,術後フォローアップは腫瘍マーカーだけでなく CT による画像診断が必須であ
る.
CEA の診断時の陽性率は 30~40%程度,再発時の陽性率は 80%程度と高い.
治療効果診断:
進行再発・切除不能大腸がんにおいては,抗がん剤や分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬など,異なるレジメンを順次切り替えて行われる薬物療法で,平均 2年 6 か月~3 年程度の予後が認められており,治療効果や再燃の監視としてきわめて重要な指標の 1 つであり,中長期にわたって頻回に測定される場合も多い.
予後予測:
一般に,CEA や CA19-9 が陽性の大腸がんの予後は陰性の大腸がんよりも不良であることが知られているが,ガイドライン上,その違いによって治療内容を変えることはない.
個人差:
測定値が基準範囲内でも個人差があり,基準値を超えない場合でもがんが存在する可能性がある.
特に,CA19-9 は,日本人の 5~10%の割合に存在する、Lewis式血液型Le(a-,b-)の人では Le 酵素が欠損しているため sLeaを産生できず、悪性腫瘍の有無にかかわらず血清 CA19-9 は上昇することが少ないことが報告されている。
保険適用:
CEA および CA19-9 の検査は以下の場合に保険適用となる。
診断時:
がんが疑われる症例での初期診断に1回のみ算定できる(CEA は 99 点、CA19-9 は 121点、2 項目 230 点 2024.4 現在)。
治療中および治療後:
治療効果の評価および再燃の監視において,原則として「悪性腫瘍特異
物質治療管理料」に含まれ、月に 1 回限り算定できる(1 項目 360 点,2 項目 400 点)。
参考・引用 一部改変
日本医師会雑誌 第153巻第7号
https://www.med.or.jp/cme/jjma/newmag/pdf/153070768.pdf
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